The Ordinary Road Release Special Interview

THE ORDINARY ROAD

Interview

10月30日にリリースされるストレイテナーのニューアルバム『The Ordinary Road』。
そこに収録される全10曲を聴きながら、今回はオフィシャルライターにロックバンド[Alexandros]の元ドラマー・庄村聡泰氏を迎え、メンバー4人のここでしか聞けないスペシャル座談会が実現!

まず、バンドが歩んだ25年の奇跡とこの素晴らしい内容に対して「The Ordinary Road(=何の変哲もない道)」と名付けるところがめちゃくちゃカッコいいし、ひねりも効いているなと思っていて。

ホリエ:(笑)。でもわざと謙遜した感じで皮肉っぽくひねったタイトルっていうわけではなくて。「~Road」みたいなジャケットがいいよねってシンペイが提案してくれたところからなんだよね。

シンペイ:曲が出揃った後にジャケットどうしようかってなって、そこでThe Beatlesの「Abbey Road」みたいなイメージが浮かんで。でもあの道自体がアイコニックになったのはThe Beatlesがジャケ写にしたからなんだよね。元は本当に何の変哲もないただの道だったのに。なんかそんなイメージがいいんじゃない?って提案したらホリエ君が(道を)見つけてきてくれて。この道どうかな?ってみんなに連絡をくれた時に「タイトルは“The Ordinary Road”にしようと思う」ってのがあって。

ホリエ:歌詞見てくれたかな?実はここに...。

「Uncertain」からの引用ですよね。

ホリエ:そう。歌詞書いてる時からお気に入りのフレーズだったんだよね。そこから取ったっていうのもあるし、Duran Duranの「Ordinary World」って曲がめっちゃ好きで、それへのオマージュって思いもありますね。

俺はOrdinaryって聞くとSadeの「No Ordinary Love」とかイギリスのThe Ordinary Boysってバンドとか思い出しますね。「Boys Will Be Boys」って曲とか結構流行ってて。

ホリエ&シンペイ:The Ordinary Boysね!いたいた(笑)。

シンペイ:一発屋みたいな(笑)。結構いい曲あったし好きだったな。

ホリエ:シンペイ一発屋好きだもんね(笑)。

シンペイ:一発屋のリード曲はめちゃいいからね(笑)。

ひなっち:そういうのってバンド自体は消えてっちゃうけど曲は残るみたいなところあるよね。

ホリエ:しかもそういう曲に限ってずっと残ってたりするしね、羨ましいよね(笑)。

シンペイ&ひなっち:ウチらそういうのないからね(笑)。

ホリエ:そう、その一発がない(笑)。幸せなことだけどね、一発屋じゃないってことは。

ひなっち:嬉しいよね。それだけ長く求められ続けてるってことなんだから。

ホリエ:一発が強すぎたらその後がしんどくなってっちゃう気もするし。

シンペイ:全世界の一発屋たちはそれでライブしんどくなってったんだと思うんだよね。ずっともう永遠に「またこの曲か…」って思いながら演ってたりするのかな。

ひなっち:芸人さんはちゃんとネタも名前も残るよね。

ホリエ:バンビーノの“ダンソン”も復活したしね。

ひなっち:最近メンバー内ではその話題だよね(笑)。

一発という話題が出たので聞いてみたいんですが直近(インタビュー当時)の秀吉とのライブでテナーの一発と言えば「Melodic Storm」がプレイされていましたが、リリースからずいぶん時間が経ったこの曲も未だに新鮮な気持ちでプレイされてますか?

ホリエ:リリース当時から好きでいてくれている方達への思いもあるし、そこは“責務”って気持ちもあるかな。と言いつつ最近はあんまやってないけど。

シンペイ:でも他のバンドのライブ観に行った時にそのバンドの「Melodic Storm」的な曲が聴けると溜飲が下がるというか、スッキリする感覚は確かにあるよね。

ホリエ:MO'SOME TONEBENDERにはやっぱり「GREEN & GOLD」やって欲しいみたいな(笑)。

「Applause」全曲解説の際にも百々さんの名前が出て来ておりましたが。

ホリエ:あの人は先輩の中でもイジっていい枠だから(笑)。

俺は百々さんに「ペチカ」やってくれって散々言ってるんすけどねえ…。

シンペイ:「ペチカ」いいね。

ホリエ:年末聴きたいもんね。

俺個人としては本日インタビュアーという立ち位置ですけれども[Champagne]としても[Alexandros]としても何度も共演させて頂いたりメンバー皆さんと公私共に仲良くさせて頂いていたり、はたまたソーセージの化身でお馴染みの633のスタイリングも担当させて頂いたりという間柄なのですが、1人のテナーファンとしてまだまだ聞きたいことが沢山あって。先程シンペイさんが「やってくれるとすっきりする曲」って発言されてましたが、自分の中ではテナーのその曲って4つあって。それが「Melodic Storm」「REMINDER」「TRAVELING GARGOYLE」「ROCKSTEADY」なんですよね。この4曲の立ち位置ってメンバー間ではどんな感じなんですか?

OJ:おお、完全にファン目線の選曲だね。

ホリエ:そこは「Lightning」じゃないんかい(筆者はありとあらゆるところでテナーの1番好きな曲は「Lightning」だと発言しています)。

「Lightning」への愛は不変です!が、ここではライブでやってくれるとスッキリする曲として挙げているので。

シンペイ:これはやってくれるだろってお客さんも思ってくれてる枠の曲だよね。

ホリエ:「Melodic Storm」はアンセムチューンというか、ストレイテナーの曲をあまり知らない人でも、この曲だけは知ってくれてたり、だからどんな場面にでも持ってこれるってのがあるね。後の3曲はもうちょいコアなお客さんが好きでいてくれてるって感じかな。

シンペイ:もっと一般向けな曲だと「Melodic Storm」「From Noon Till Dawn」「シーグラス」とかになってくるかもね。

ひなっち:やっぱサトヤスはしっかりファン目線の選曲なんだな。

はい。まさに「From Noon Till Dawn」や「シーグラス」はバンドの歴史の中で過去のいわゆる“やってくれるだろ枠”を更新してきた曲という立ち位置に感じてまして。

シンペイ:確かに。聴く世代が違っても一曲はそういう曲がちゃんとあるイメージかもね。

ホリエ:そういえば「Melodic Storm」ができて10年後に「シーグラス」ができてる。

ひなっちさんなんかライブで歌詞口ずさみながらベース弾くじゃないですか、あのスタイルがめちゃくちゃ好きで、今俺が挙げた4曲だと1番楽しいのはどれになります?

ひなっち:やっぱり「Melodic Storm」はお客さんとの一体感がすごいなとは感じるよね。みんなで大合唱できる感覚はあるかな。

ホリエ:「Melodic Storm」が響かなかった時のフェスとか結構くじけるよね。

一同:(笑)。

ひなっち:前に出れなくなる(笑)。でもOJはそんな時でも前に出るからすげえなって思う(笑)。

ホリエ:お客さん盛り上がってなくてもOJが手拍子煽ってくれるから「OJいるから大丈夫だ」って思ってる(笑)。

OJ:逆に嬉しくなっちゃう。

ラスサビ前のアルペジオ弾いてる時でもそんな感じですか?

OJ:その時点で反応が特になかったらなんかもう、嬉しくなっちゃう(笑)。

ひなっち:でも響かない時も全然あるからね。呼ばれたイベントとか対バンとかで相手の方が動員多い時とか。しかも1時間ステージとかまあまあ長い時に「頼むぜMelodic Storm!」って感じでやるんだけど、それが響かない時のOJは強いっていう(笑)

ホリエ:「Melodic Storm」はどこに置いてもいいから一曲目にやることもあるし、その場を試すって意味で。お客さんも自分たちも緊張がほぐれるしね。

シンペイ:会場の音響がどんなにワチャクチャでも何とかなる曲(笑)。

ホリエ

そういえば俺がいた時の[Alexandros]はサウンドチェックで「Dracula La」をやることが多かったり俺が大好きなLUNA SEAは未だにサウンドチェックは「Déjàvu」って曲から始めるみたいなんですけど、テナーにもそういう肩慣らし的な曲はあるんですか?

ホリエ:「Melodic Storm」とか「KILLER TUNE」とかかな。

「KILLER TUNE」もサイコーですけど「BERSERKER TUNE」もサイコーです。

ホリエ:あれは結構的を絞ってやってるかも。さっきの曲が響かなかった時の話に繋がるけど「BERSERKER TUNE」が盛り上がらなかった時は結構ダメージ食らうから(笑)。

シンペイ:肩鳴らさないであれやったら死んじゃう。

ひなっち:“何のためのバーサーカー!?”ってなっちゃうもんね。テナーのファンでいてくれてる子達はめちゃくちゃ喜んでくれるけど。

ホリエ:乱発はできない。

ひなっち:最近のテナーの見せ方も変わってきてて、それもあるかも。フェスでめっちゃ激しくやってとにかく盛り上がるみたいな感じでもなくなってきてるから。その辺のバランスが変わってきたなっていうのも感じるね。

それ「Applause」聴いた時もすごく感じました。ガンガン盛り上がるというより横に揺れて気持ちいい感じというか。

ひなっち:元々自分のルーツの主軸がR&Bとかジャズとかヒップホップなんだけど、最近のストレイテナーのサウンド感とかアレンジの構築のやりかたに、そんな自分がルーツとして吸収していたものがすごくダイレクトに投影できるようになってきてて。それがすごく面白いし、楽しいんだよね。

OJさんからもその辺り、聞いてみたいです。

OJ:入った当初はとにかくいい曲作ろう、いいライブしようってのに必死だったんだけど今はもっとこう、素のままでいいんだなって思えるようになったかな。自分以上のものは元々持ってないし、自分以上のものを持つこともできないってことが分かってきたから…。自分を素直に出す。音にしてもライブにしても、それでいいのかなって。

ひなっち:レコーディングでもOJはそうだもんね。「これ以上は無理」って。諦めフィッティングというか、気負わなくてはんなりしてる感じが音にもいい感じで出てて、最高だと思う。

シンペイさんはいかがですか?

シンペイ:さっきのフェスとかの話じゃないけど他のみんなはそれぞれのやり方でわっしょいやってて、じゃあ俺たちはそうじゃないやり方で楽しんでもらおうよっていう、メンバーみんなの肝が据わってきたというか。

ホリエ:ちょっと前のフェスのやり方はある意味盛り上げたもん勝ち的なところもあったもんね。

ひなっち:そこが渋滞してたんだよね。

ホリエ:お客さんもお客さんで“煽られるの待ち”的な空気感も感じてきたし。

シンペイ:そこから抜けるのにも度胸がいるじゃない。でも俺たちはそのやり方から外れても絶対曲やライブの良さを届けられるしなっていう自信はあった。

ひなっち:そこそこ前から外れてるしね。

シンペイ:だから俺たちぐらいは俺たちなりのやり方で楽しくやろうか、みたいな気持ちがある。

ホリエ:元々手拍子を煽ることすら恥ずかしがってやらなかったんだから。多分2008年とかのRUSH BALLでやった「KILLER TUNE」の間奏で初めて手拍子煽った時なんかファンのみんなはびっくりしてたからね。

一同:(笑)。

“あのホリエが!!??”みたいな?

シンペイ:手拍子じゃなくてPAに合図でもしてんのかなみたいな(笑)。

ひなっち:“ホリエどうしちゃったんだろう?”って思ったんじゃないかな(笑)。

ホリエ:その時から比べたらこれでも今はだいぶオープンマインドな方ですよ。“歌ってくれ!”ってやっと言えるようになったし。

俺の世代だと行くライブのジャンルにもよりますけどモッシュでぐちゃぐちゃになってTシャツ破けちゃってみたいなこともよくありましたけど、そうじゃなくなってきたライブの方がリアムタイムな若いお客さん達が「シーグラス」のビートで楽しそうに身体を揺らしている光景とか感動するんですよね。テナーはちゃんと更新してくれてるな!って、本当にそう思います。しかも夏がどんどん長引く昨今、“今年最後の海へ向かう”が楽しめる時期もどんどん長くなってますし(笑)。

ホリエ:物理的には南下してけばいいから(笑)。

シンペイ:沖縄行っちゃえばずっと聴けるね(笑)。

ひなっち:もう意地でも今年最後の海をずっと感じていたいんだ(笑)。

スミマセンくだらない話を。あとこれもどうしても聞きたかったのですが、今の4人になってから初めてのアルバムが2009年の「Nexus」。こちらでは極めてヘヴィな楽曲群を聴かせてくれて、翌年の「CREATURES」では一変、かなりディープな世界観へと向かったじゃないですか。4人になってからも15周年を超えているということでその当時のこともお聞かせいただきたくて。

ひなっち:「Nexus」はOJが入ってくれたことによりオルタナ的な音楽で無双しちゃったんだよね。

ホリエ:OJが入ってくれたけどまだ3人時代の流れもあったから完全にガラッと変わるんじゃなくて、3人の延長線上として4人のストレイテナーがあるんだよって姿を示しとかないとなって感じで「Nexus」を作って。でも言ってくれた通りかなりヘヴィなアルバムだったからこの感じで次作るの無理だわって、ちょっと疲れちゃって。

ひなっち:そうそう、だから次はもっと繊細な方向に行ったんだよね。

ホリエ:そう。一曲ずつ聴いたら「Nexus」も素晴らしいアルバムなんだけど、あれ通して聴くとちょっと疲れちゃうっていうか。だから次はもっと自由に面白いことやれたらなっていうのと、あとは当時のマインドでいうと、同世代だったり、なんとなくシーンとして括られてるバンドとは全く違うものを見せたいっていう天邪鬼なところもあって「CREATURES」ができたって感じかな。

OJさんは「Nexus」「CREATURES」でそれぞれ出した音、入れた音について聞かせていただけますか?まだ必死だった頃かとは思いますが…。

OJ:「CREATURES」の頃の方が楽しかったかな。「Nexus」は張り詰めすぎてたというか、まあその空気感ごとパッケージできたからいいアルバムなんだけど、「CREATURES」は各曲が“そこ”ではないところに行こうとしてるし“そこ”ではない場所に向かう力も働いてるし、“何か面白いことやろう”って思いも4人共通してあったと思うから、面白いよね。

シンペイ:「Nexus」のツアーも結構長かったからね。

ひなっち:そう、その反動だよね。テナーは反動系バンドだから。一つのところにとどまりすぎると“違うとこ行きたい!”ってびゅーんって飛んでっちゃう。

シンペイ:そういえば「Nexus」の頃のスタジオ(下高井戸)は今のスタジオよりも疲れてたような記憶がある。扉開けるのもなんか重いなみたいな(笑)。

ひなっち:駐車場からスタジオまでも遠い気がしてたもんね。駐車場すぐ近くなのに(笑)。

足取りも重かったんですね(笑)。さっき話してくださった“反動”もそうだと思うんですが今共通して“こんな音鳴らしたいな”みたいな思いもメンバーに通念としてあったりするものなんですか?

ホリエ:共通させてはないよ、擦り合わせるとかもないし。

ひなっち:そこはホリエくんに引っ張られる感じなんだよね。パチンコのゴムみたいな感じでホリエくんのモードに一箇所に引っ張られて、そっからびょーんと飛び出してく感じ。

ホリエさん的にはそんなメンバーの飛び出し方の制御はしない/できない感じというか「そっち行くか、面白え!」なんて感じたりもするんですよね。

ホリエ:それはあるね。曲をアレンジする時も自分の想定内に収まるってことがあんまりなくて。想定外にグワっとメンバーにハンドル持ってかれても、結果として面白い景色に連れてってくれるんだよね。

「Nexus」~「CREATURES」でそんな背景があっただなんて!ありがとうございます。そして30分ほど経ったのでそろそろアルバムのインタビューを始めようかなと思うのですが…。

ホリエ:アルバムのこと話さず1時間とか余裕でいけそう(笑)。あ、でもなんか「Nexus」のこと悪く言ったみたいな感じになっちゃったけど、それは違うからね。好きだし、名曲揃いのアルバムだし。ただ、濃ゆい(笑)。

ひなっち:そう。力使うんだよね。

ホリエ:それぞれ一曲一曲にドラマがありすぎて、これでライブ終わってもいいかもってくらいの感じ。「クラッシュ」とか1曲目なのにね。

分かります。聴き手としてはもうこのバンド解散するんじゃないかっていうギリギリな感じが味わえる作品だと思ってます。

ホリエ:その感じもまたいいんだよね。確かに「Nexus」の頃は一曲に全部詰め込もうとしてたから。

ひなっち:一曲ごとに伏線張ってその回収まで曲中できっちりやりたいみたいな。

ホリエ:そう。それに伴って展開も多くなるし間奏も長くなるし。でも最近は一曲の中にドラマを詰め込みすぎず、その曲たちの個性を大切にした展開とかを作る様にしてて、「The Ordinary Road」の曲たちは自分たちがプレイする上での楽しさとか、セットリストで旧曲と混ぜた時の良さもちゃんと見える様な新曲たちになってるのかもしれないね。

まだアルバムの話を始められていない中でまたこんな質問するのも本当に恐縮なのですが、昔からテナーはアルバムやシングルとは別にミニアルバムやEPも多数リリースがあるじゃないですか。アルバムやシングルはもちろんのこと、ミニアルバムやEPまでもが得意なバンドって結構珍しいなって思ってて。

シンペイ:節目節目で出してるね。

ひなっち:確かにミニアルバム得意だよね。

ホリエ:それは本当に初期からだね。実験できちゃうっていうか。例えば「ROCK END ROLL」の「POSTMODERN」とか「GUNSHIPRIDER」は“これがストレイテナーなんだぜ”じゃなくて“こういうの面白いよね”って思いで入れてて。そういうのを気分で入れられるのがミニアルバムの良さだし、それをファンにも楽しんでもらえてるっていう。実験だけどクオリティ的にも恥ずかしくないものを作り上げられている自信もあるしね。

個人的にはテナーのミニアルバム/EPって一曲目にブチ上がる曲を配置してくれてる印象があって、そのままの勢いでスルッと聴けちゃう爽快感があります。

ひなっち:そうだよね、サイズがいいんだよね。

その時その時のテナーのモードが窺い知れるんですよね。「シンデレラソング」とかもう、ぶっ飛ばされました。シンペイさんの好きな語録に“乳酸ソング”ってのがあって、速い16ビートをガーッて叩かなきゃいけない曲なんかそういう言い方をしてたと記憶しているんですが(一同笑)。

シンペイ:あれは確かに乳酸ソング筆頭だね。オーラル(THE ORAL CIGARETTES)のドラムのまさやん(中西雅哉)にも言われたからね。“なんであんなに16ビート一生懸命叩いてるんですか?”って(一同笑)。褒めてくれてたんだけどね。

シンペイさんの16ビートはメタルなギターがブリッジミュートで刻んでるくらいの荒々しさがあって、音もデカくて、あれは他のドラマーではなかなか味わえないですよね。

ひなっち:レコーディングでやっちゃったもんだから(笑)。

シンペイ:あの叩き方はやろうと思わないとなかなかできないもんね。アレンジの段階でホリエくんから“ここは16(ビート)で!”って言われた記憶がある。

それに付随してなのですが25年やっていく中でリズムとかフレーズに対する捉え方なんかもやっぱり変わってきてます?

ホリエ:そうだね。ちゃんと常に“今”の音楽をずっと聴いてるし。

ひなっち:「シーグラス」なんか本当そうなんだよね。最初はノリのいい8ビートな感じでアレンジも進めてたんだけどもっとこう“グルーヴを止めたい”って思って。グルーヴを止めたり音数を抜いてったら必然的に今っぽい感じというかモータウン的なノリにすることができて、それが曲にバチっとハマったんだよね。そういう“今”鳴っている音楽と自分たちの曲を照らし合わせながら可能性を探ってくのが結構面白くて。

ホリエ:そうだね。元々はエモの延長線上みたいな曲だったんだけどひなっちが言ってくれた通りアレンジでリズムがグルーヴィーになって。そうすると演奏するのも楽しくなって。それこそエモの延長線上のままだったらドラムも16で刻めって言ってたかもしれないし(一同笑)。

あのBPMでそれやったら速すぎて死んじゃいますね。

シンペイ:なんなら2ビートとかね。

ひなっち:メロコアになっちゃう。

それはそれで合いそうですし、そんなビート乗せたとしてもメロディの良さは全くブレないのがテナーすげえな、強いなって思うんですよね。

ホリエ:メロディはアレンジとは全く別の脳で作ってるところがあるからね。だから元々バラードのつもりだった曲がアレンジの段階でアップテンポになった曲も沢山あるし。

例えば?

ホリエ:「ROCKSTEADY」とかね。まあその頃は特にそうで、当時の自分は今みたいにアレンジの幅もそんなになかったから全部アッパーでメロディックなアレンジにしようと思ってたんだよね。

全員

「The Ordinary Road」の曲でアレンジによってガラッと変わった曲はありますか?

ホリエ:いろんな曲が二転三転してったよ。だから全曲元のままじゃないかも。“この4人でライブでいい感じのテンションで演奏する”ってなったらこの形かなっていうのをアレンジでは考えてるから。

メロディは別の脳で作ってると仰っていましたが、ファンとしては非常に気になるところなので具体的にお聞かせいただけますか?

ホリエ:そっちの方が作りやすいんですよね。メロディはメロディとして別で作っといて、じゃあこのメロディにどんなアレンジを施すかっていうやり方。「Skeletonize!」とかそうだったかも。メロディだけ抜いて聴くと全然メロウな曲にもなり得るラインだからそれありきでアレンジすると必然的にメロウな感じになっちゃうけど、メロディとアレンジは別物として分けて考えてるから外した感じのアレンジにもできる。

だから「ROCKSTEADY」みたいにバラードとして作った曲をアップテンポにすることもできてるってことなんですね。なるほど!そのメロディの強さが今作ではもうスパークしまくってるなって思ってまして、各曲の表情も全然違うし、音楽としての密度もそれぞれ濃くて…。

ひなっち:でもあっさり聴き終わる。

ホリエ:密度は高いけど「Nexus」の密度とは違うんだよね。

そうなんですよね。スルッと聴けて。「パレイドリア」の重たい感じもこれがもし「Nexus」や「CREATURES」に収録されていたら更に重かったり長かったりしたんだろうなって思います。

ホリエ:音数は今の気分もあるし世界的なブームもあると思うんだけど、あんまり要らないなって思ってます。音と音の隙間が大事というか、あと歌のある場所をはっきりさせたいってのもあって。若い頃はそんなこと全く考えてなかったから、歌よりもギターがデカくていいみたいな。それで良かったんだけど。

ひなっち:オルタナ無双してたからね(笑)。

ホリエ:それよりも今は楽曲の音像の中で歌のある場所をちゃんと確保しておきたい。

ひなっち:むしろそっちの方がトガって聴こえるよね。音数詰め込んでいかにもロックっぽい感じに仕上げなくても、歌のある場所とか音の隙間を大事にしている感じをバンドが凛として鳴らせばちゃんとロックに仕上げることができるようになった。それが今のテナーの強みだよね。

ホリエ:ヒップホップのアーティストの歌モノもそんな作りじゃないですか。他の音で埋めないっていう。

ひなっち:あの隙間がいいよね。

音数の話で俺も思ったんですけど「パレイドリア」のドラムもハイハットが一小節に8つではなく4つという隙間のある刻みで、敢えて音を抜いてるんだなって。

ホリエ:あれオシャレだよね。でもむずいんだろうなって思ってたけど。

まさにそうで、その隙間だらけのビートをオシャレに色気ある感じで叩くのって結構難しいんですよね。実際に曲を聴きながら振り返ってみて頂きたいのですが…、というかいきなり9曲目から始めてしまってすみません(笑)。

ひなっち:全然いいよ。

ホリエ:「パレイドリア」は1番最後にアレンジした曲だね。

ひなっち:音の抜き方が究極だよね。

ハイハットを抜くっていうのはホリエさんのアイデアだったんですか?

ホリエ:そうだったと思う。8つで刻んじゃうと隙間がなくなっちゃうから。

ひなっち:ドラムの音自体も歪ませてるんだよね。

ホリエ:そう。アンビ(楽器そのものの音だけではなく周囲の音も取り込む)で録った後にエフェクトで歪ませて。

ひなっち:90年代のトリップホップ的な要素も入れたよね。

ホリエ:この曲作った時にPotisheadが浮かんで、その影響も入れたかな。

ひなっち:そこにR&Bな感じのベースを入れて、うまくハマったなと。

レトロなフィルム映像というか、セピア色というか、そういう雰囲気を感じました。サビの裏で鳴っているストリングスはメロトロン(1960年代に開発された磁気テープを媒体とするアナログ再生式のサンプル音声再生楽器)ですか?

ホリエ:そうだったかも。シンセの音色選んでる時に直感でハマったものを選んでる。

トリップホップとかメロトロンとかも今また再評価されてますもんね。パレイドリア(視覚刺激や聴覚刺激を受け取ったときに、自分がふだんからよく知っているものが見えたり思い浮かべてしまうという知覚現象)ってここで始めて知った言葉なんですが、前からストックとしてホリエさんの中にあった言葉なんですか?

ホリエ:雲の形が生き物に見えたり、建物の窓が目に見えて顔っぽいなって思ったり、そういうことが日常よくあって、それを「パレイドリア」って言うって人から教えてもらって知りましたね。

アルバムの中でも1番異端な空気を放っている曲だなと思って最初に聞いてしまったんですが、ライブではアウトロもっと長くやってくれたらめちゃ気持ちいいんだろうななんて勝手に思ったりもしてます。

ホリエ:(笑)。アウトロ短くしがちなんだよね。全然いけるけど。でもこれでも伸ばした方なんだよね。

OJさんはいかがですか?こういう曲で切なく響くOJさんのギターが大好物で。

ホリエ:レコーディングではずっとアウトロ弾いてるOJをずっと俺がジャッジしてて。今の良かったよ!とかさっきの方が良かったかも!みたいなのをなぜか俺がジャッジしてる。この曲だとOJはアウトロのソロっぽいところのフレーズを決めてなくて、そういう時は出たとこ勝負で弾く人だから(一同笑)。だからこの曲は結構録ったよね?

OJ:結構録ったし、一回諦めた。改めて録りま~すって(笑)。

諦めフィッティングですね(笑)。

ホリエ:俺も一回聴きながら寝ちゃったこともあって。で、起きたらまだ録ってんの(笑)。

ひなっち:面白いな~。

OJ:でもこれはイントロ一発目のフレーズを出せただけでアレンジとしてはもう“勝った”って思ったんだよね。確信めいたものがこのフレーズにはあった。

ひなっち:あのフレーズで曲の世界観も決まったしね。

アウトロの話に戻りますけどフレーズを決めずに挑むOJさんのアドリブ力の強さはメンバーも信頼している感じということですよね。

OJ:アドリブ力はメンバーみんな強いんじゃないかな?

ホリエ:弾きたがりじゃないんだよねOJって。テクニック自慢とか、ギターソロで俺のすごさを聴かせてやるぜ!ってタイプじゃないから、どっちかっていうと“フレーズ師”。

OJ:歌えるフレーズがいいよね。

“フレーズ師”大山純の歌えるフレーズと言えば「COME and GO」のリフなんかもう、優勝ですよね。

ホリエ:絶妙だよね。

ひなっち:そういう“気持ち良さ”が大事だと思うな。今の音楽って。

OJ:でもあのリフ全部スライド奏法で弾かなくちゃいけないからライブ中は一歩も動けない。ずっと指板見てないと間違えちゃう。

ひなっち:煽りにいけないんだ(笑)。

あの名リフができた瞬間は?

ホリエ:リフは結構OJにお任せだったよ。その裏で鳴ってるちょいダサなプラック音のシンセが最初からイメージとしてあって、そこにプラスで鳴ってるギターって感じでお願いしたんだよね。Two Door Cinema Clubみたいな“ペラン”とした感じのギターが最初のシンセと一緒に鳴ってたら80年代っぽさとオルタナっぽさの間をオシャレに行く感じになるかなって思って。でもサビはめちゃくちゃJ -ROCKっぽいっていう、そういう要素がせめぎ合うことで面白い曲になった。でも最初は自分たちでもちゃんと面白い曲になってるかはちょっと不安だったし、それはレコーディングエンジニアもそうだったみたいで。だからエンジニアは“ミックスして曲の完成図が見えた時にすげえ好きになりました!”って言ってた。で、そのミックス聴いて俺らも“確かに”って思ったんだよね。自分たちでも仕上がるまではどんな感じになるか分からなかったから。

ひなっち:その時はシンセも鳴ってなかったしね。

てっきりギターリフが最初にあってそこから広げてったのかなと思ってましたが、まさかの逆だったんですね。興味深いです。

ホリエ:大体の曲はリフが先なんだけどね。でもこの曲はシンセが先だったな。

先程サビはJ -ROCKって仰ってましたが、それでもその王道ではない感じが気持ちいいんですよね。サビ頭のメロディは高い音程に行かずにぐんと低くなるじゃないですか。

ホリエ:難しいんだよね、あれ。一筋縄じゃ行かないぞってのを自分に課して、実験に実験を重ねて。でもメロディができた時は“きた!”って思ったよ。

サビ直前の“free rein free rein”で音程がパンっと高いところに行って、サビ頭で一回音程が落ちて、サビ後半でまた高くなるという構造がいいですよね。サビ頭を下げて直前直後の高い音程で挟むという高低差がスリリングでした。

ホリエ:だいぶ高等テクニックだと思うんだけどね。

ひなっち:普通逆だもんね。

ホリエ:そういうのも含めて今までにない曲だと思いますね。

1サビ後の間奏も面白いですよね。個人的に大好きなPhoenixの感じなんかも想起させてくれて。

ホリエ:ちょっとプログレッシヴな展開ね。あれはもう、どうしてもそうしたくなっちゃって(笑)。

ひなっち:俺もとりあえずベース弾いてみてって言われたけど“これなんの状態?”って思ってた(笑)。でも結果そこがベースソロみたいになっちゃったからライブ用のアレンジでは音源とはちょっと変えて、そこは結構真面目に弾きこんでやってる。“やば”っていう状態です(笑)。

ホリエ:あそこで急にストリングス入ってきた挙句最後にはトランペットまで入れて、ちょっとわけ分かんない感じにしたくて。でも前後にはちゃんと強力なサビがあるから大丈夫でしょって思ってます。

ひなっち:その間奏をCとDっていう王道の2コードで本編に戻すっていうテクニックすごいよね。今までのなんだったの!?っていう(一同笑)。

ライブ動画も拝見致しましたが、音源で鳴っているドラムとは打って変わってガシガシに叩いているシンペイさんが最高でした。やっぱテナーのライブはこうでなくちゃ!と。

シンペイ:通じ合ってるねえ(笑)。サビの後半はそうして叩いてるけど前半は大人しく叩いてる。むしろサビ前半を大人しく聴かせるために後半思いっきり叩いてる感じかな。

歌詞についても聴きたいのですが、ここで「走る岩」「泳ぐ鳥」「叫ぶ星」と過去曲のタイトルが引用されますが。

ホリエ:苦し紛れかな…(笑)。

本当ですか?

シンペイ:ここで強引に他の曲名とかも歌ったりして「ROCKSTEADY~♪」みたいな(笑)。

ホリエ:温めてきたわけじゃないよ。これが集大成ですって意図もなくて、ごく自然に出てきた感じ。

ひなっち:ちょっとお客さんの心を刺したくなっちゃったのかな(笑)。

でも思えば苦し紛れに出たフレーズって名フレーズになる場合も多くて。例えば今度来日するJimmy Eat Worldの代表曲「Sweetness」はずっとウォーウォー言ってる曲なんですけど、その理由はただ歌詞が思いつかなかったからなんて話も聞いたことがあります。真偽不明ですし余談なんですが。でもこれはファンとしては嬉しい一節ですよね。そういえばホリエさんは歌詞中に動物がよく出てくる印象があるのですが、特に鳥を多用されている印象があって。それは何故なのでしょう?

ホリエ:鳥が好きだから。鳥っつってもセキセイインコが好きなだけなんだけど。

ひなっち:セキセイインコ今ウチにいるからね。飼っちゃってる(笑)。

モチーフとしての鳥という意味ではどうですか?

ホリエ:やっぱり鳥って詩におけるアイコン的な意味を孕んでる動物じゃないですか。いろんな意味を投影できる存在でもあるし。「泳ぐ鳥」では遠くまで手紙を届けてくれる伝書鳩って使い方で歌ってるし。初期なんか特に自分たちの音楽がどっかに届いてほしいって思いが滲み出てたんでしょうね。高いところに手を伸ばしたりだとか、そういう思いが出まくってた。ライブのMCでも具体的には言わない現状打破への思いを抽象的に歌詞に込めてたんだよね。その象徴として鳥ってモチーフがあったのかな。あとは超えたいとか壊したい存在としての“壁”とかもよく出てくるかも。でも鳥といえば「ワタリドリ」なんじゃないの?

あの鳥はすごいですからねえ(笑)。俺の高いシンバルのセッティングをシンペイさんは“エゴの塔”なんて名付けてくれておりましたが。

ホリエ:いろいろ例えてんな(笑)。

ひなっち:やってんねえシンペイ(笑)。

シンペイ:あんなよく鳴るわけない位置のシンバルなんか“エゴの塔”だって思って。そのうち塔が2つに増えてたし(笑)。

増やしたのはシンペイさんのセッティングからの影響ですからね。

シンペイ:ハイハット側に2枚クラッシュがあると両手で叩きやすいからね。

シンペイ

あとシンペイさんのセッティングと言えばウインドチャイムなんですが、あれはアルバムで使いましたか?

シンペイ:あれはライブ専用だから(笑)。

ですよね(笑)。ライブでは今作のどの曲のどこにウインドチャイムを入れるのかも楽しみにしております。次は「Zero Generation」なのですが、シンペイさんのデッカいドラムのビート感がすごく気持ちよくて。曲展開も面白いし。

ひなっち:(歌詞を見ながら)このフレーズ誇張し狂いたい(笑)。

歌詞ですよね。“絶対に成功させようぜ”はやはりヨネダ2000のフレーズからですか?歌い出しも“ボケっぱなしでツッコミはなし”ですし。

ホリエ:そこはあんま突っ込まないで頂いて…。歌い出しはお笑いが好きだからボケとツッコミって言葉を使って、でその後はことわざをもじった歌詞になってて、サビは“ぜ”で始まって“ぜ”で終わるようにしてて。“ゼロから始めようぜ”にはリゼロ(Re:ゼロから始める異世界生活)がちょっと入ってるし、他に“ぜ”で始まるフレーズだと“絶対に成功させようね”がどうしても浮かんできちゃって…(笑)。

ひなっち:めっちゃおもろいよねこれ(笑)。

なるほど。歌詞も曲も遊び心あふれる展開ですがどっちが先行したんですか?

ホリエ:最初はサビのちょっとハネたリズム一辺倒で曲を作ってたんだけど、その頃ちょうどライブで「DONKEY BOOGIE DODO」をやってて、ああいうアレンジの方向に持ってくのもアリだなって思ってきたんだよね。プリプロの時にメンバーにそれを伝えたら最初みんな“?”って感じだったんだけどそんな中イントロのリフが生まれて、“これはダサいけど、どうなるかな?”っていう、そのダサい感じを楽しみながら作っていった感じだったね。

OJさんはいかがでしたか?アレンジ段階のエピソードとか。

OJ:自分で言ってるから言っちゃうけど俺もイントロは“ダッセえなこれ大丈夫かな”って思ってた(笑)。

ひなっち:俺は“山賊の歌なのかな?”って思ってた(笑)。

ホリエ:ちょっとハロウィンっぽい感じもするイントロだよね。イントロ前の“序”の部分でギターとベースのフレーズがあるんだけど、あそこがあるからイントロのダサいファンキーさが活きるんだよね。レッチリ感というか。“序”の部分は気に入ったから間奏でもう一回使ってるしね。やっぱこれ好きだな。曲にうまく効いてる。

なんか俺だんだんアルバムの応募特典の“テナー全員に2時間あれこれ質問できる権”に当選したファンみたいな気分になってきました。こんなにありがたい話を沢山聞けるだなんて(一同笑)。

引き続きあれこれ聞いてみたいんですけどこういう“ダサい”を楽しくというか胸張ってやれるようになったのっていつ頃からなんですか?これ皆さんに聞いてみたいです。“ダサい”的な音楽を楽しんだ上でカッコ良く聴かせるのってそれこそ最初の方で伺ったバンドの度胸や器量が試される瞬間だなと思ってて。

シンペイ:あんまり俺はそういうの思ったことないかも。

ホリエ:思い出した。「Super Magical Illusion」はダサいなと思いながら作った曲だ。ダサいのを大手振ってカッコつけてやるのが面白いというか。ある種のボケみたいな。

シンペイ:あの曲途中で急にキラキラになるしね。

ひなっち:なんだあの世界観っていうね。

ホリエ:ああいうシュールな感じをバンドでやったのはその時期だね。

俺はあの曲大好きです。超喰らいました。

ホリエ:途中まで直球で途中から全然直球じゃなくなる。後半のキラキラした展開とか“ダッセえな~!”って思いながらやってた(笑)。

OJ:間奏がカオスになってからの展開が“(ダサすぎて)ツラい!”みたいな(笑)。

実はこのインタビューの裏テーマとして読んでくださった方それぞれのテナープレイリストを作って欲しいなっていうのがあったんですよ。今作もそうなんですが過去曲も珠玉の名曲だらけなバンドじゃないですか。なので過去曲の名前やその影響となった音楽もインタビュー中に出しまくって、今出てるみたいに「Zero Generation」が好きだったら「DONKEY BOOGIE DODO」や「Super Magical Illusion」を繋げて聴いたり「COME and GO」と「シーグラス」を繋げた後にTwo Door Cinema ClubやPhoenixを繋げたり「パレイドリア」とPortisheadも繋げて聴いてみて欲しいんですよね。

ホリエ:「COME and GO」で言えば「Superman Song」って曲も聴いてみて欲しいんだよね。さっき言ってくれてたPhoenixが好きな感じとか、そういう流れとして脈々とやり続けてるテナーの一つの軸にある曲だから。

そういえば当時ホリエさんTwo Door Cinema ClubのTシャツよく着てましたよね。それで知ったんですよね。

ホリエ:バンド知る前にTシャツだけ買っちゃってたんだよね。しかもなぜか沖縄で売ってて(笑)。

そんな風に俺もテナーきっかけで好きになったバンドも多いので、読者の方にはこれをきっかけにもっとテナーの曲を聴いて欲しいし、他アーティストからの影響を落とし込むのもめちゃくちゃ上手いバンドだと思っていて。トレンドの音楽だから取り入れようではなくてちゃんと好きでちゃんと楽しく他の音楽も聴いてる感じがすごく伝わるんですよねテナーの曲からは。なのでそういった元ネタ的な音楽も含め、もっともっと音楽を楽しんで欲しいんですよね。

ホリエ:今はもうバンドとしてブレない自信があるからってのもありますね。

ひなっち:今すごい楽しいよね。

そして、先程ホリエさんが仰ってた「シーグラス」や「Superman Song」とはまた別のテナーの軸の一つですよね。4つ打ちぶち上げダンスチューン「Skeletonize!」。これはもう…ヤられました。

ホリエ:ありがとう。

MVも演奏シーン中心の直球な作りながら、こちらもめちゃくちゃカッコ良かったです。シンペイさんがXでポストされてましたがテイクもかなり重ねたとか?

シンペイ:めっちゃ重ねた。でもその分いい出来になったよね。

ひなっち:本当にめっちゃ重ねたよ。しかも控え室が電気点かなくて真っ暗な中1人で待機してて「俺何やってんだろう」って。病んじゃったもんね(笑)。

シンペイ:そう、楽屋戻ったら携帯の明かりだけがポツンと点いててその向こうにひなっちの顔があって。

ひなっち:地獄だった。

(笑)。曲できた時はメンバーみなさんもすごく手応えを感じたんじゃないですか?

シンペイ:と言うよりは反響にびっくりしたんだよね。MVのティザーを上げた時点でもうものすごく反響があって。「COME and GO」の時と全然違ってたの。だから“そんなに刺さったんだ”って。

ひなっち:“これを待ってました!”って感じだったらしいんだよね。

シンペイ:だからストレイテナーの新曲を待っててくれた人たちにはホリエくんのテンション感とかがどストライクだったみたいなんだよね。当人たちは意外と“そうなんだ”って感じだったんだけど。

“待ってました!”な感じももちろんありつつ、イントロのピアノのコードがオシャレに広がってく感じなんかは斬新でしたし、昔のテナーだったらもっと直球だったのかもなと思いました。あのピアノがいい意味での聴きやすさというか、重すぎて胃もたれしない感じを演出してくれてる印象なんですよね。

ホリエ:確かに、音数で埋めたりはしてないね。

ひなっち:これもすごく音の隙間があるんだよね。

ホリエ:強いていうならOJがイントロに乗せたノイズみたいな歪んだギターをサビとかでも薄く貼り付けて場面に厚みを持たせるっていう仕掛けは施してますね。でもギターで埋めるっていうよりはやっぱりピアノが鳴ってる感じとかドラムの重たいビートとか、レコーディングしたバスドラムの音にも後から低音を更に足したりとかして、パンキッシュなダンスナンバーに天邪鬼な感じを合わせてったって感じですかね。

これは「ゴールデンカムイ」のタイアップのお話があってから作られた曲なんですか?

ホリエ:メロディは元々あって、このメロディはダンスナンバーになり得るなって思いついたのが「ゴールデンカムイ」の話が来てからかな。

サビの歌い方も今までにない感じというか、喉から血が出てるんじゃないかってくらいの凄まじいテンションでしたが。

ホリエ:千切れるかと思いました(笑)。

レコーディングは大丈夫だったんですか?

ホリエ:レコーディングで一回喉潰してる。でも翌日には修復できてるので。意外と、タフ。

そう言えばテナーの皆さんは全員フィジカル強いイメージがあります。

ホリエ:1日2曲くらいのペースで歌入れできたらいいなって感じで進行してて、でもこの曲やったらその日が終わっちゃうから。しかもAメロの落ち着いてる部分はしっかり落ち着いた感じで色気もある歌を録りたいし、そこからサビでガッとテンションを切り替える感じも難しいし、サビを一回やっちゃうと今度はもうAメロの感じが出せなくなっちゃったりして。そのせめぎ合いが結構大変だったけどとにかくこのサビは普段のテンションで歌ったら全然良くないなって思いが強くて、結果こういうやり方を選んだって感じですね。

タイトルもまたインディーズ時代のアルバム「SKELETONIZED」を想起させる昔からのファンには超ニヤリなサプライズでした。

ホリエ:これは間奏の途中で何か叫びたいなって思った時にパッて浮かんだ言葉で。

シンペイ:これ実は仮タイトルから完成寸前で「Skeletonize!」に変わってるんだよね。

仮タイトルはなんだったんですか?

ホリエ:カタカナで「ハテナ」。Bメロの“ハテシナイ”から取った。でも間奏で“Skeletonize!”って叫んでたから、こっちをタイトルにした方が印象が強くなるかなと思って。

シンペイ:結果タイトルもまたこっちの方がよりゴールデンカムイの世界観とマッチしたしね。

ホリエ:だからMVにも実は恐竜の骨を投影してみたりして、それもタイトルから来てる。

先ほどのプレイリスト的な話で言えばこの曲の後には是非「SKELETONIZED」を聴いて欲しいんですが、これって未配信…。

シンペイ:その時期の全部をまとめたベストがあるからね(「Early Years」)。そちらで(笑)。

でもこれはもう「KILLER TUNE」とか「BERSERKER TUNE」とかを繋げて聴いていただければ。

ホリエ:あとピアノと打ち込みを使った曲って意味では「78-0(Behind The Scene収録)」のダークなサウンド感に通じる部分もあるかも。この曲作った時は65daysofstaticってバンドをよく聴いてて、こんな曲作りたいなって思ってできた曲なんだよね。

65daysofstatic、懐かしい!

ホリエ:「78-0」を今年ライブで掘り起こしてやってるんだよね。そこでのピアノや打ち込みの経緯があったから「Skeletonize!」があの形になったってのもありますね。

いやあ、俺いい話聞けてんなあ(笑)。しかし改めて65daysofstatic、懐かしい。ではこちらのバンドも繋げて聴いてみてくださいねってことで。

ひなっち:めっちゃ聴いてたからね。

ホリエ:あの頃はBattlesの初期とか、そういうインストバンドをよく聴いてたんだよね。

それでは次の「Exelion」ですが、こういう曲が入ってるとまた嬉しいんですけれども、あえて聞いちゃいますがこの手の曲もまだキラキラした気持ちでできちゃうのってすごくないですか?イントロの“ジャージャージャージャーダンダンッ!”ってキメの若々しさというか青臭さというか…。

シンペイ:すごいでしょ(笑)。

ひなっち:びっくりするよね(笑)。

ホリエ:照れはあるけどね(笑)。

でもなんかこう、悔しいですよ。テナーがいまだに堂々とこういう曲をやれているってことが。

シンペイ:Foo Fightersもいまだに臆面もなくこういうのやってるからね。

まさに俺もこの曲からFoo Fightersが浮かんだんですが、でもFoo Fightersですら今はやりたがらないであろうってくらいのシンプルなイントロですよね。

ひなっち:イントロ本当すごいよね。

やっぱりこういうのはやってて気持ちいいですか?

ホリエ:ライブでやってないから気持ちいいかどうかはまだ分かんない(笑)。

シンペイ:気持ちよくなかったらやらなくなるかも(笑)。

ホリエ:こういう曲は単純にカッコいいと思ってるし、こういうジャンルっていうのが日本のロックには根強くあるじゃないですか。この手の曲がメインストリームにずっといるっていうのは日本ならではかなとも思うし、それに対するリスペクトも込めてますね。

その感覚はすごく伝わりました。サビ後半でリズムがハーフタイムになる展開なんか2000年代エモの感じを思い出したりもしますし。でもこの手の音楽も近年また若い世代にリバイバルしてたりするんですよね。

ホリエ:あのちょっと壮大になるところね。

ひなっち:確かに。若い世代には新鮮に聴こえるかもね。

リフの音色もカッコいいですよね。

OJ:うん、いいよねえ。

音作りはギター2人で話し合って決めてるんですか?

ホリエ:この音いいね!ってのはOJと話してたかもしれないです。

OJ:以前はいちいち許可を得てたところがあって。でも今は音作りも自分で作ってみて、ある程度までできてから“いかがでしょうか”って感じだから、自分の意思の方が強く音に出てるかな。

うわあ、いい話。

OJ

OJ:あとこの曲一個だけいいっすか。セッション2日目の時にコード予習して行ったんですよ。でワンツースリーフォーでやってみたら全員違うコード弾きだして。あれは流石に俺が止めたよね。“違う違う!”って(一同笑)。

そんなミスあります!?

OJ:音止めたら“なんだっけなんだっけ”ってなってて。いや、作った人どうした?って。ひなっちも自信満々で間違えてるし(一同笑)。

ひなっち:作った当初はまだにわかなんだよね。1日経ったら忘れちゃう。いつもは1日目のセッション音源聴き直してからスタジオ行くんだけど、その日はそう言えば聴いてなかった。勘でやったら、ダメだった(笑)。

それライブで再現して欲しいですね。もしくはボーナストラック「ダメなExelion」みたいな(笑)。

ひなっち:めっちゃディスってくるじゃん(笑)。

ホリエ:確か二つめのコードをミスったんだよね。しかも二つめのコードが正しくなかったらこの曲全然カッコ良くなくて普通になっちゃうのに、よりにもよってそんな大事なコードを(笑)。

あとは勢いで言っちゃいますけどこの曲は是非ともNothing's Carved In Stoneにカバーしていただきたいです。

ひなっち:確かに。あり得るね。これ系の曲は(笑)。

ホリエ:Aメロの低い音程なんか拓(村松拓)っぽいしね。

ひなっち:バチバチに同期音入れてね。

そうなんです。ナッシングスが同期音マシマシでこの曲やったらめっちゃかっこいいなと。

ホリエ:テナーは同期なしでやっちゃうからね。

そこがテナーのいいところなんですけども。繰り返しになりますが「Exelion」はとにかくイントロのキメが全てを物語るような曲だなと思いました。そして続く3曲の流れがアルバムで特に好きな部分なんですけれども、まずはなんとも切ない「リヒトミューレ」。

ホリエ:いいよね。

歌の譜割りが面白いなと思いました。トラックは割と平坦な印象なのですがリズミカルな歌で踊らせてくれる感覚が新鮮で。

ホリエ:ありがちなところに収まりたくないって思いはどっかしらメンバーみんなあると思うんだけど、自分の中だとできた段階では割とありがちな曲って感じだったからこれをどう持ってくかって楽しみながらアレンジしてましたね。

「リヒトミューレ」って言葉も先の「パレイドリア」同様ここで初めて知った言葉なのですが、これはラジオメーターのドイツ語読みなんですよね?

ホリエ:製品の名前だと思うんですよね。テレビ観てたらそれを売ってるお店が紹介されてて“いつか行ってみたいな”って。で、それを見た時点で物語性を感じたんですよね。「耳をすませば」に登場する人形のバロンみたいな感じ(主人公の雫はのちにバロンを主人公とした物語を創作する)で、リヒトミューレって存在だけでなんか書けちゃうような気がしたんですよね。

その存在を知ってから曲が生まれたんですね。

ホリエ:そうだね。元々あったメロディを「リヒトミューレ」って曲にしたんじゃなくて「リヒトミューレ」って曲を作ろうって思った時にメロディも歌詞も同時に出てきたから、この作り方は珍しいかも。“時間の経過”をうまく使った物語というか、歌詞にしてみた。

個人的になのですがホリエさんはどちらかというと普段の話し声なども含め柔らかな声質だなと思ってまして。その柔らかめな発声で歌われるサビのメロディが格別にございました…。

ひなっち:もうずっとファン目線だね(笑)。

だってファンなんですもの(笑)。

ホリエ:このメロディだよね。(少し照れくさそうに)自信ある。

そして「リヒトミューレ」の歌詞に出てくる“雨”から繋がるように「雨の明日」へと続きますが。この連なりは意識しての曲順ですか?

ホリエ:ある程度の流れは意識して曲順も組むけど歌詞に出てくるのは同じ主人公ってわけでもなくて、時間の流れも前後はするけど、でもその経過を感じられる曲順ではあるかな。「雨の明日」には「リヒトミューレ」より希望がある。

ただただ、いい曲です。

ひなっち:赤裸々だよね。アレンジも含めて。

ホリエ:赤裸々っす。これもだいぶ音数は削ったアレンジになってる。もっと音数増やしたり荘厳な感じでやるといわゆる邦楽の王道バラードっぽい感じにもなり得るメロディなんだけど、ストレイテナーでそれやるのはちょっと違うかなって思って。打ち込みのループを乗っけたりして淡々とした風景の方がこの曲には合ってるなって。アコースティックでもできるし、エレキでもできる感じというか。これはもうライブでもやってる。

お客さんの反応もですが、対バンからの反応も良さそうですね。テナーはロックサウンドも然りですが「SOFT」で顕著なように昔からアコースティックサウンドにも真剣に取り組んでいるバンドじゃないですか。じゃないとこの感じはなかなか出せないですよね。

ホリエ:そう言えばマイヘア(My Hair is Bad)と対バンした時もこの曲やったんだけど、マイヘアもそのお客さんも我々世代のエモとかオルタナみたいな音楽の影響受けてるんだろうなって思って「泳ぐ鳥」とか「TRAIN」とか激しめの曲を結構やったんだけどそれよりも「雨の明日」の方が反応良かったかも。

ひなっち:俺もあん時びっくりした。「泳ぐ鳥」こんなに引っかからないんだって(笑)。

ホリエ:マイヘアは“言葉”のバンドなんだなって思った。

ひなっち:「泳ぐ鳥」より前の静かめな曲やってる時の方がお客さんグッときてたもんね。激しいのやんなきゃ良かったみたいな。これじゃ“TRAIN損”じゃんみたいな。自分たちで自分たちの首絞めてるようなセットリストにしちゃった(一同笑)。

“TRAIN損”名言いただきました(笑)。

ホリエ:歌と言葉が聴こえる方がお客さんにはちゃんと伝わってる気がしたから、そういう場合もあるんだなあって思った。

曲の振れ幅があまりにも広く対バン相手も選ばずどんなシーンでも戦えるテナーならではのエピソードですよね。個人的にはこの曲、歌詞の“ずっとね”の“ね”がすごく好きで。

ホリエ:これも変化っちゃ変化ですね。親しみやすさというか、語りかけるような感じが歌詞でも出てきたってのは。

その変化というか、こういうのが出てくるようになったのはいつ頃からなんですか?

ホリエ:いや、いつ頃からってわけじゃなくて、この曲だから出てきたって感じ。でもさっき出た「SOFT」の「シンクロ」とか作ってる頃だったらここまで親しみやすい表現じゃなくてもうちょっとオブラートに包んだ感じにしてたかもね。

短編小説を読んでいるような心境に浸れました。あと“マンガみたいには強くなれないよな”って歌詞もすごく好きで。

ホリエ:なかなか出てこないよね。

シンペイさんもマンガ大好きですよね。相変わらず読んでます?

シンペイ:読んでるよ。アニメはあんま観れてないけど。

変な質問かもしれませんがホリエさんから“マンガ”って歌詞が出てきたことについてはどうですか?

シンペイ:特にどうってほどでもないけど、でも俺らはマンガ世代だからね。マンガが娯楽のトップみたいな世代だったから。

ホリエ:マンガの中のキャラクターから勇気をもらったりとかもあるけど、それだけでは自分は強くなれないからなっていうのが歌詞としてぽろっと出てきた感じかな。

たまんねえ話を聞けております。

ひなっち:“たまんねえ会”だ(笑)。

そして、このアルバムで1番好きな曲を選べと言われたら俺は「インビジブル」ですし「COME and GO」と同時くらいリフが優勝してる曲だなと思ってます。

ひなっち:俺もこれが1番だね。すごい好き。

このリフはどこから生まれたんですか?

ホリエ:リフはもう、OJが。

OJさんすげえっす(一同笑)。リフも音色もOJさん考案のものですか?

OJ:うん。このリフもそうだし、アルバム全体でも単音をスライドさせるだけでフレーズを作ったりとか、そういう単音を作り込む感じのプレイを結構多くやってて。それは「COME and GO」でもやってるし「リヒトミューレ」のサビでもやってる。

ホリエ:それが近年のOJのスタイルなんだね。

OJ:そうだね。でも「リヒトミューレ」のサビ中のフレーズはあまりにも音数を少なくしすぎちゃったかなって思ってちょっと悩んじゃった。“病んでる時のジョン・フルシアンテだってもうちょい弾くだろ”みたいな(一同笑)。これでいいのかって悶々としてたんだけど全体で聴くとすごくいいからそれで良かったんだけどね。「インビジブル」は大体の枠組みができてきた時にリフを乗せていく感じで作った。

リズム隊のこの感じも近年どんどん磨きがかかってるなと思います。

ひなっち:このリズム気持ちいいよね。

シンペイ:ひなっちがいるとこういう感じやりやすいんだよね。ひなっちがいるから最低限のドラミングでも成立させることができる。曲中でフィルも試してみたんだけどどうにも馴染まなかったしね。「パレイドリア」のドラムもそんな感じだった。

ひなっちさんはこの曲が1番好きと仰ってましたが。理由は?

ひなっち:なんか、好き(笑)。単純にこういう曲が好きなんですよね。ホリエくんのこういう世界観、あるじゃないですか。これが本当たまらないんですよね。ちょっとオリエンタルな雰囲気も感じられて。それでいてエモいし。

夢と現実の狭間辺りを歩いている様な音像と歌詞とメロディだなと思って聴いております。

ホリエ:秀逸だよね。

ホリエさんはどんな人生観と音楽観を持ってこの世界観を作っているんだろうと改めて思います。

ホリエ:いや、そんなすごいもんでもないっすよ(笑)。でも確かに歌詞で表現する世界観とか人生観はある程度出来上がってきてる感覚はある。良いんだか悪いんだかだけど。

なんとも切ない献身というか、捧げる歌ですよね。

ホリエ:そういう歌です。

無性の愛的なテーマが?

ホリエ:(歌詞の主人公は)ちょっと消極的すぎるとは思うけど、自分がいない方が相手は幸せだと思うっていうのを歌にしてますね。

この「リヒトミューレ」から「インビジブル」の3曲は繋げて聴くとして、この流れで俺は「群像劇(Crank Up収録)」とか聴きたくなります。

ひなっち:なるほど。

ホリエ:「群像劇」は手応えあったよね。

ひなっち:そうだね。「群像劇」はライブでやってても手応え感じるからねいまだに。すごい。

ホリエ:感じるねあれは。ああいう曲ってライブで高まるんだよね。「群像劇」は高まっちゃう。

ひなっち:あれはすごい高まる。

その発言はファンもめっちゃ高まると思いますよ。俺も高まってます。元はEPの2曲目ですもんね。「宇宙の夜 二人の朝」でぶち上がってから“なんだこの地味だけどめちゃ良い曲は!”ってなったことをよく覚えています。メンバーも好きなんですね「群像劇」は。嬉しいです。

ホリエ:曲のサイズは短めなんだけど色々といい感じに詰まってるよね。

ライブでもよくやってるんですか?

ホリエ:一時期は気に入ってフェスとかでもねじ込んでたけど最近はやってないかも。

では代わりに今後のフェスでは「インビジブル」をねじ込む感じで。

ホリエ:勇気出さなきゃ(笑)でも何が響くかは本当にやってみないと分かんないからね。

ひなっち:本当にそう思った。だって「泳ぐ鳥」があんなに響かないライブもあるんだから(一同笑)。

ホリエ:やっぱセットリスト組む時は実際のライブの景色も想像するんだけどその時は「泳ぐ鳥」から無双状態!って想定だったんだけど全然ダメだったからね(笑)。

ここまで喋ってくださるのは超嬉しいですし、この話も全部掲載する気でいるんですけど…。

ホリエ:全然大丈夫。

ひなっち:面白いから(笑)。

日向

ありがとうございます。続いての「工場夜景」。これはまずファンの聖地巡礼スポットを増やす上でズバリ聞きたいのですが、どこの工場ですか?

ホリエ:川崎辺りの工場かな。横浜行く時に車窓から見えるあの辺り。綺麗だよね。昼間見るとなかなか威圧感あるけど夜の工場夜景は綺麗だからね。

「Exelion」とも通ずる話なのですがその工場とか夜景をモチーフにするのって10~20代のバンドが好みそうな、モチーフとしての若さ、青臭さも感じるんですけれども、それを25周年を超えたテナーがやるってのがまた、いいですよね。なんでこんなに若々しい瞳のままで物事を捉えられるんだろう?と思います。

ホリエ:(笑)。本当は打ち込みのリズムループを乗せたり、テクノっぽいアプローチにしようと思ってたんだけどいざ4人でやってみたら“あ、素のままでいいか”って思った。

なるほど。じゃあこの曲はもう、スルッと出てスルッと合わせてスルッと録って…みたいな感じだったんですか?

ひなっち:これはもう何も考えてないよね。

ホリエ:でも今の若いアーティストがこんな曲実際に作ってて。

そうですよね。さっき話した2000年代エモのリバイバルとか、インディーロック系の若手アーティストもどんどん出てきてますよね。

ホリエ:そうなんだよね。ある時たまたま聴いたそういうアーティストの曲がエモいギターリフと打ち込みのリズムでエモ+テクノみたいな曲で、それがすごい斬新で。だから“あ、こういう曲作りたい”って思ったのが最初。でも俺たちはバンドだったから結局サンプリングとか何もしないでできちゃった(笑)。だから声だけちょっとオートチューンかけたりとかでそれっぽく仕上げてみたんだよね。

ひなっち:軽く声がケロってる。

終わり方も潔くて好きです。

ひなっち:OJ(のギター)残しね。

OJ:ハーモニクスね。

ライブになるとこの曲もやっぱりシンペイさんはガシガシ叩きそうですか?

シンペイ:いや、この曲はそうはしないかな。置きに行く感じで叩くと思う(笑)。曲後半のクラッシュシンバルだけのところはガシガシやっちゃうだろうけど。

いやしかし、宅録系インディーロックとかその辺からの影響だったとは思いませんでした。

ホリエ:意外や意外。だから昔やってた事を今リビルドしたんじゃなくて、逆に今こういうのがカッコいいと思ってやってるアーティストからの影響を受けた上で俺たちも今カッコいいと思ってやってる。

なるほど、合点がいきました。今更こういうのが出てきたのではなく、逆に今だから出てきたってわけなんですね。「パレイドリア」は最初にお話を聞きましたしそろそろ2時間を超えてしまいそうでして、話が長くて本当に申し訳ありません(笑)。ラスト「Uncertain」です。これもFoo Fighters辺りを想起させる曲調でしたがやはり「Exelion」同様このストレートさはなかなか出てこないよなとも思いました。

ホリエ:これはもういいメロできたから、素直にアレンジするかっていう。

ここで歌われる“何の変哲もない道”が結果アルバムのタイトルにもなりましたね。

ホリエ:この曲が1番最初に着手してアレンジもやって。で、こんだけいい曲できたからもうアルバムは一安心でしょって思えた。

これは満場一致で最後にするべき曲に決まったんですか?

ホリエ:どうなんでしょう?

ひなっち:俺は1曲目になるって思ってた(一同笑)。

それもアリですけど(笑)。

ホリエ:俺はこれが1曲目だったら結構照れちゃうかも(笑)。

ひなっち:すげえいい曲だからこれで始まるのもおかしくないなって思って。

ホリエ:でもこれも本当、赤裸々だよね。

ひなっち:EPだったら1曲目にしてたかもね。

ホリエ:ああ、それはそうかも。

ひなっち:すげえいい曲。

ホリエ:シングルにしてもいい曲だよね。

そう思います。この曲に関しては正直インタビューを放棄したくなるくらい、聴いたら分かるでしょって思ってます(一同笑)。

ホリエ:これは好きな人沢山いるだろうなって思いますね。

“どんな「ありがとう」で伝えよう”って一節もすごく好きです。テナー好きで良かったって思える歌詞ですよね。そういったファンへ向けた意味もあるんですか?

ホリエ:いや、どうすかね…自分でもグッときながら歌詞書いてたのは覚えてるけど。

ほら、インタビュアーはこういう質問好きじゃないですか。これはファンに向けての「ありがとう」なんですか?とかメンバーに向けての「ありがとう」なんですか?とか(笑)

ホリエ:そこまでがっつり自分を投影してないから、あくまで物語としての感覚で書いてる。

なるほど。このパワーポップな感じもまた今リバイバルしてたりしますよね 。

ホリエ:あとこの曲作ってデモも作って、それをメンバーみんなに送ろうってなった時にひなっちのお母さんが亡くなっちゃったんだよね。このタイミングでこの曲送る…?って躊躇してた。

ひなっち:俺はそん時号泣してた。あん時はヤバかった。

ホリエ:もうプリプロも決まってたからひなっちにも送ったんだけど。

ひなっち:悲しみを乗り越えてプリプロに行ったな。

そんなお話を聞いてしまうとよりこの曲に対する思い入れが上がってしまいますね。ご冥福をお祈り申し上げます。そしてそんなアルバムを引っ提げてのツアーも決まっていますが、ライブで「Uncertain」の“この不確かな道のりで 遠回りして見てきた景色を きみにも見てほしい”が聴きたいんですよね。これはどうしたってファン目線を投影してしまう歌詞なので、ツアーではどんな景色を見せていただけそうですか?

ホリエ:それはこれから旧曲とも混ぜつつセットリストも組んでいくから、それこそ言ってくれたプレイリストの話みたいに、この新曲たちをどの旧曲たちと一緒に聴いてもらおうかなっていうのは、うん。これからですね。

今作はどの旧曲とも繋がりそうな曲たちですよね。本当に間口が広い。

ホリエ:あとは今までの作品よりも身近な感覚はあるかもしれないね。現実的というか、日常的な曲が多いかなと思う。

「Uncertain」と「REMINDER」とか繋げて聴いたら俺泣いちゃいそうです。

ひなっち:観にきてよ。

行きます!

最後に個人的にテナーのライブがいかに素晴らしいかって話で締めたいんですけど、シンペイさんが連れて行ってくださったフジロック、覚えてます?

シンペイ:だいぶ前だね。

ホリエ:いつだろう。2018?

いや、2014だったと思います。その時はシンペイさん出演者なのにも関わらずずっと俺と遊んでくださって。どうしても観たかったBiffy Clyroってバンドの時なんか“荷物観ててあげるから前の方行ってきなよ”なんてことまで言ってくださって。それで前の方行ったら明らかにおかしい暴れ方してる人がいて。氏原ワタル(DOES)さんだったんですけど(一同笑)。

ホリエ:あの人も長崎だから同郷なんだけど、もっと田舎の方の人だから(笑)。

で、その時のテナーのライブ、ラストの「TRAVELING GARGOYLE」で俺号泣してるんですよね。

ひなっち:ヤバいな(一同笑)。

シンペイさんだけじゃなくテナーの皆さんはバンドマンとしても個人としても知っている方達なのですが、四者四様の世界観と個性を持っていて趣味嗜好や話すことなんかも全くバラバラな印象なのですが、なんでいざライブになるとあんなに強いんでしょうか?結束力というか、グルーヴというか。それがカッコ良すぎて号泣に至ったという。

ホリエ:“だから”かもね。バンドって一個の方向を常に向いてなきゃいけないわけじゃないから。“個”があるから。

ひなっち:尊重しあってる証拠なんだよね。あとは干渉しすぎない。ある種みんなもう個人としては独立してるしできてるんだけど、その上でまだ4人でわちゃわちゃしてる。それがテナーのすごさです(笑)。

仲間が増えていくバンドも本当に珍しいですしね。

ひなっち:ワンピース方式だから(笑)。

ホリエ:いつかそう言えるとは思ってるけど“ファンがいるからバンドを続けられてる”みたいなところにまだ至ってないんだよね。楽しくてバンドやってるから。だからいつか“ファンのためにバンド続けたいです”みたいになるのかもしれないけど、“まだ”っすね。

最高なお言葉いただきました。これで締めたいと思います。ありがとうございました!

ひなっち:“イイ締め”だ(一同笑)

全員

オフィシャルライター 庄村聡泰
ロックバンド[Alexandros]のドラマーとして2010〜21年まで活動。 バンド時代の収入ほぼ全てを注ぎ込むほど傾倒した音楽や衣服を中心に、映画や漫画、アニメやグルメ、世界各地の珍スポットなどのさまざまなカルチャーに精通。それらの知識や経験を元に"#サトヤスタイリング"の名義でスタイリスト、"#ショウムライター"の名義で執筆業やインタビュアー、その他イベントMCなど多岐に渡る活動を展開しており、自らを"万事屋(よろずや)"と称する。

Movie

Release Info

10月30日(水)Release
12th Full Album「The Ordinary Road」

The Ordinary Road

通常盤

¥3,000(税抜)

CD
TYCT-60236
CD
全10曲収録
The Ordinary Road

初回限定盤A

¥7,800(税抜)

CD+Blu-ray
TYCT-69316
Blu-ray
“BIRTHDAY OF THE LOST WORLD” 2023.11.08 at Shimokitazawa SHELTER
The Ordinary Road

初回限定盤B

¥7,800(税抜)

CD+Blu-ray
TYCT-69317
Blu-ray
テナモバ presents “STRAIGHTENER MANIA” vol.2 2024.08.12 at Zepp DiverCity(TOKYO)
The Ordinary Road

完全数量限定盤

¥14,800(税抜)

CD+2Blu-ray+GOODS
D2CE-15136
GOODS
2025年カレンダー付The Ordinary Roadオリジナルアクリルプレート
※UNIVERSAL MUSIC STORE限定商品
※予約受付は終了しました。
※デジパックジャケットの裏表紙は、初回限定盤Bのジャケットと同じ写真を使用しております。
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